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札幌市など11市町村が旅先納税で周遊を促進、北海道の新たな観光推進モデルを目指す

2024年2月13日8:00

さっぽろ連携中枢都市圏内の11市町村(札幌市、小樽市、岩見沢市、江別市、恵庭市、北広島市、石狩市、当別町、新篠津村、南幌町、長沼町)で2024年2月1日から旅をしながらふるさと納税を実現する「旅先納税」の共通返礼品として電子商品券「さっぽろ圏e旅ギフト」の発行がスタートした。デジタルギフトを提供するギフティのデジタルプラットフォーム「e街プラットフォーム」を活用したサービスとなり、北海道における新たな観光推進モデルとなることをさっぽろ連携中枢都市圏や公益社団法人 北海道観光振興機構(HTO)は目指している。

左から公益社団法人 北海道観光振興機構 会長 小金澤 健司氏、札幌市(さっぽろ連携中枢都市圏代表) 副市長 天野 周治氏、ギフティ 常務執行役員 森 悟朗氏(2月1日の記者説明会)

広域連携によるふるさと納税を開始
旅行者、事業者、地域住民が恩恵を

さっぽろ連携中枢都市圏内の11市町村が実施する旅先納税は、寄附者が11市町村から好きな寄附先を選ぶことができ、11市町村のすべての加盟店で利用できる「さっぽろ圏e旅ギフト」を、寄附額の3割分の返礼品として受け取ることができる。利用者は専用サイトからアクセスし、クレジットカードを利用して寄附が可能だ。決済完了後、マイページに電子ギフトが発行され加盟店舗で利用できる。寄付額は1万円~300万円まであり、206店舗(2024年2月1日時点)で利用可能だ。

「さっぽろ圏e旅ギフト」を使った決済のデモ体験を、札幌市内に5店舗を構える「鮨鮨 棗 大通ビッセ店」で実施

なお、旅先納税に関しては、導入している北広島市などは市内の住民の利用も可能だが、さっぽろ圏e旅ギフトについては11市町村の在住者は利用対象外となる。

HTOは周遊観光の促進、滞在日数の長期化、観光消費額向上による地域経済の活性化に向けて、11市町村とともに広域連携によるふるさと納税をスタートする。北海道観光は昨年9月にアドベンチャートラベル・ワールドサミットが開催されるなど注目を集めている。北海道の観光はコロナ前の水準まで回復しつつあり、今後も需要が高まるとした。また、2月4~11日までさっぽろ雪まつりが開催された。HTO会長 小金澤 健司氏は「観光は宿泊にとどまらず、飲食、運輸、農業、水産業などに波及効果があり、地域の仕事を生み、地域経済の力になります」と話す。その経済効果を最大化するためには、さらなる周遊観光の促進と平均滞在日数の向上が課題となる。HTOでは2020年6月より北海道観光のさらなる発展のため、改革プロジェクトを立ち上げ、外部有識者からの提言を実行に移してきた。

その1つとしてギフティと連携して旅先で寄附できる旅先納税を開始することとなった。旅先納税は応援したい地域へ実際に旅行する想いと行動がマッチした新しいふるさと納税の形だという。観光を通して地域の魅力を体感してもらうことで、11市町村の新たな観光コンテンツの発展にもつながる。札幌圏11市町村の広域返礼品であり、いずれかの市町村に納税すれば11市町村すべての加盟店で使用することができるのが特徴だ。小金澤氏は「この取り組みは旅行者、事業者、地域住民が恩恵を受け、好循環を生み出す北海道における新たな観光推進モデルとなるよう運営してまいります」と意気込みを見せた。

まだない魅力を発見し、
新しい体験をするきっかけに

札幌市と近隣市町村においては、2019年3月にさっぽろ連携中枢都市圏を形成し、魅力ある街づくりを進めるため、さまざまな連携した取り組みを行っている。記者説明会では、さっぽろ連携中枢都市圏を代表して札幌市 副市長 天野 周治氏が挨拶した。

札幌圏は充実した都市機能を備えている一方で、自然豊かな環境で、食や観光資源も豊富で多くの観光客が訪れている。札幌圏を構成する市町村にはまだ知られていない魅力がたくさんある。例えば、ジンギスカンや海鮮丼は有名だが、農業を産業としている市町村も多く、新鮮なとれたての野菜を食べることができる。また、農業の集客体験やワカサギ釣りなど、体験型の観光も可能だ。スノーリゾートなど雪を楽しめる場所もある。今回の取り組みは参加する市町村のどこに寄附をしても全市町村の加盟店で使える電子クーポンが発行される。天野氏は「ちょっと足を延ばして新しい体験をしてみようとそう思っていただけるきっかけになるのではないかと考えています。周遊観光によって札幌圏を楽しんでいただき、ファンを増やしていきたい」と語った。活力ある札幌を目指し、11市町村が連携して人を呼び込める取り組みをしていきたいとした。

全国53自治体で採用
北海道は全国でも導入が先行

今回の具体的な取り組みについては、ギフティ 常務執行役員 森 悟朗氏が紹介した。ギフティのビジョンは、eギフトを軸として、人、企業、街の間に、さまざまな緑を育むサービスを提供することだという。eギフトは1枚1枚がユニークなURLで発行される。eギフトのURLをメールやSNSで送るだけで完結し、リアルタイムの消込をするだけで、利用可能だ。

ギフティは、eギフトを発行・流通させる「eGift System」サービス、個人向けのeギフトサービス「giftee」、 法人向けのeギフトサービス「giftee for Business」、自治体向けのデジタルサービス「e街プラットフォーム」 の4サービスからなる「eギフトプラットフォーム事業」を展開している。今回のサービスは「e街プラットフォーム」を活用した旅先納税だ。

「e街プラットフォーム」は、地域のニーズに応じた発行形態が可能だ。例えば、電子化した地域通貨や乗車券・入場券を発行し流通させることができる。また、地域の加盟店で利用できる電子商品券の発行・流通にも対応している。旅先納税は、スマートフォンから即座に寄附ができ、ふるさと納税の返礼品として地域で利用可能な電子商品券を即座に受け取り、市町村内のお店で使用できる。

ふるさと納税は、寄附先を自ら自治体の中から選択でき、自己負担額2,000円を除いた全額が控除の対象だ。その意義として森氏は、①使われ方を考えるきっかけになる、②故郷のみならず応援したい地域の力になる、③自治体間の競争が進み地域のあり方を考えるきっかけになるという3つを挙げた。ふるさと納税の令和4年の寄付額は9,654億円、令和5年の控除適用者数は891万人まで広がっている。

ふるさと納税の現状として、畜産・海産・農産物といった第一次産業で特色のある自治体に人気が集中している。そういった従来の配送型の返礼品に加え、旅先納税では観光・サービス業で即座に返礼できることで、返礼品の受け取り・利用までの一連の行動を旅前・旅先で喚起することが可能だという。

前述のようにふるさと納税実施者は 約891万人いるが、ふるさと納税対象者は約6,450万人いる。旅先納税ではふるさと納税の未実施者の約86%など、現地を訪れた人が現地で寄附を体験してもらいたいとした。また、新しいチャネルから新しい参加者に利用してもらうチャンスだという。

利用者は、出会った人や街に共感をしたらスマホからクレジットカードを利用して寄附が可能だ。決済後は、飲食・観光などの地域での体験で利用可能な電子商品券(e街ギフト)を 返礼品として即時に受け取り、1円単位で利用できる。また、店舗は電子スタンプ押下やQRコードを使って決済できる。

旅先納税は、岡山県瀬戸内市で2019年11月にローンチした。2020年に入りコロナ禍で自治体への導入・進捗に遅れが生じたものの、2月1日時点で53自治体が採用している。その中でも北海道では、全国の導入自治体の約43%に相当する23自治体が旅先納税を導入している。

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