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JR東海のDXプロジェクトを加速させたNTTデータのDBOとは?

2024年2月29日8:40

コロナ禍による需要消失の後、アフターコロナでは人々の生活様式は大きく変化しており、将来的にも生産年齢人口減により鉄道会社の需要は縮小するなど先行き不透明な時代になっている。こうした環境変化に対応するためJR東海(東海旅客鉄道)は、グループ事業と鉄道事業の需要創出を目指すDX(デジタルトランスフォーメーション)プロジェクトを推進している。まずは、グループ事業の中核である駅ビル会社の営業基幹システムを共通化することにより、コスト削減と収益拡大を両立する施策に乗り出した。プロジェクト推進の原動力として選んだシステムは、NTTデータのショッピングセンター(SC)向けデジタルバックオフィス(DBO)だ。(決済・金融・流通サービスの強化書2024【PR】)

駅ビルの営業基幹システム共通化
コスト削減と収益拡大の両立狙う

JR東海事業推進本部DX推進・マーケティング総括担当課長 小林丈通氏は「事業環境が激しく変化する中で、現状維持は『停滞』ではなく『衰退』であると考えました。新たな需要を生み出すためには、グループ事業と鉄道事業の需要創出を目指すDXプロジェクトの推進が必要でした」と話す。

JR東海事業推進本部DX推進・マーケティング
総括担当課長 小林丈通氏

需要創出するため、①グループ共通ポイント制度を立ち上げてCRM強化すること、②鉄道とグループ事業のデータ連携によるグループ全体の需要創出、③グループ共通のマーケティングプラットフォームの構築という3つの施策を同時に進めようとした。しかし、現状の個別システムを維持しながらバラバラのインターフェイスから共通プラットフォームにつなげるとイニシャルやランニングのコストが高くなるという課題があった。グループ全体のシステムを大きく変更する機会はめったにないことから、この機会を捉え、グループ事業の中核である駅ビル会社の営業基幹システムを共通化することにより、コスト削減と収益拡大を両立する施策として実現しようと考えた。

一方、NTTデータはJR東海グループが抱える課題の解決に向けたアプローチを検討していた。NTTデータ カード&ペイメント事業部  テクニカル・グレード 松永知之氏は「2016年頃から、ショッピングセンター業界では、顕著にデジタルシフトへの対応が議論になってきていました。そしてコロナ禍により、より実店舗に軸足のある運営に対して強い危機感をもつことになり、多くのお客様へのヒアリングやマーケット分析から、個別最適によるサイロ化、事業を支えるはずのシステムとテナントのスキームとの乖離など、これまで業界を支えてきた仕組みに限界が見えてきたようでした。NTTデータは、これまでの決済ネットワークや、決済端末にて業界の成長に貢献してきたと思っておりますが、決済の枠にとどまらない、業界に対する新たなアプローチが必要であると認識しました」と話す。

NTTデータは、決済インフラの強みをベースにしたサービスインテグレーションを新たなソリューションの1つにする取り組みを強化していた。売上報告や店子精算といったテナント管理業務に至るバックエンドを、すべてを一気通貫に統合することで、飛躍的にSC事業者の業務負荷を軽減するとともに、消費者に対して新たな購買体験の提供を実現するサービスが必要と企画、立案し、「デジタルバックオフィス(DBO)」として立ち上げた。そして、「このDBOはJR東海グループの課題解決に貢献できる」(松永氏)と考えるようになった。

図1 グループ共通プラットフォームの構築

伸びるキャッシュレス比率は
駅ビル会社の収入力向上に寄与へ

NTTデータによる具体的な提案は、JR東海との交通事業でのビジネスと関係があり、駅ビルグループのシステム共通化にとどまらず、他関連事業との連携を視野に入れ、SC事業のコアとするDBOを中心として、決済端末、会員管理、分析など、様々な分野をNTTデータでインテグレーションすることだった。さらに、共通調達のスケールを活かし、カード会社と連携することでワンストップのキャッシュレススキームについても提案した。

松永氏は「JR東海はウィズコロナにおける鉄道周辺事業の回復、アフターコロナにおける事業成長を具体的に検討していました。特に事業会社毎に個別最適化された駅ビルグループのシステムやサービスを共通調達し、経営効率を飛躍的にあげる検討に、当社の企画が合致したものと拝察します。伸びるキャッシュレス比率は、駅ビル会社の収入力向上に大きく寄与すると考え、特に腐心しました。システムを開発する、提供するだけではなく事業スキームに寄与することこそ、サービスインテグレーションであると認識しています」と話す。

NTTデータ カード&ペイメント事業部 
テクニカル・グレード 松永知之氏

一方、JR東海がNTTデータの提案を選定した決め手について、小林氏は「RFPを行い様々なベンダーから提案をいただいたが、インボイスの対応に間に合うよう短期間での実現を求めていた我々のリクエストに対しての実現性が高かったことと、現状よりも高度な機能要件にしたにも関わらずトータルコストは下がっていること、SaaSであるため今後の法令対応等の追加投資が不要になること、ワンベンダーで実現できることなど総合的な評価が高かった」ことを明らかにした。

大規模プロジェクトを円滑に進めるため
マネジメントを工夫する

インボイス対応に合わせて、プロジェクトのローンチを2023年10月に設定した。このデッドラインを過ぎてしまうと、駅ビル各社でインボイス対応することになり、グループで数千万円の追加コストがかかる。小林氏は「会社を跨いで関係者が多数 であり、かつ、複数のプロジェクトを同時進行させる必要があったため、プロジェクトマーケティング(プロジェクトの広報活動によるプロジェクトの全社化)やジョブ型マネジメント(役職に関係なく能力別に各WGリーダーを定める)など、大きなプロジェクトを円滑に進めるため、マネジメントを工夫しました」と振り返る。例えば、アプリ開発WGのリーダーに入社3年目の女性を抜擢した。能力が高いうえ、ユーザーに近い感覚を持っていたので、権限を移譲したという。

トラブルを発生してから対応するのではなく、先を読み、未然に防ぐように取り組んだ。しかし、1年で9社の駅ビル会社システムを切替える短期間の工程を計画していたこともあり、中核システムであるDBOの開発遅延というトラブルに見舞われた。その後のユーザテストでも課題が発生し、当初計画から半年程度プロジェクトが遅延する事態に陥った。再計画に当たっては、駅ビル9社ときめ細かく調整するとともに、NTTデータと綿密にコミュニケーションを取り、リカバリ計画を策定した。

NTTデータカード&ペイメント事業部 部長 福山智康氏は「再計画に当たっては、法制度対応であるインボイス対応に加え、JR東海グループの駅商業施設の共通ポイントサービス『TOKAI STATION POINT』が始まる2023年10月までに導入プロジェクトを完遂することが必達であり、それまでの間に、9社の駅ビルの移行を完了させる必要がありました。GWや繁忙期など、各駅ビルの状況や、移行作業の要員数を考慮しながら、なんとか期限までに切替を完了させられる計画を立てました」と振り返る。

NTTデータカード&ペイメント事業部 
部長 福山智康氏

豊富な専門人材を動員して遅れを挽回
NTTデータの総合力とリカバリ力に驚愕

DBO導入に向けた成功のポイントについて、小林氏は「1番のポイントは、NTTデータの総合力の高さであると感じました。今回、営業基幹システムの共通化だけでなく、駅ビル9社の会計処理の仕訳共通化も同時に実現しています。非常に困難な開発であったため、開発遅延やユーザテスト後の切替計画変更はある程度想定していたものでしたが、その後のリカバリ対応は凄まじく、気迫を感じました。開発メンバーを3倍以上に増やしたり、NTTデータ社内や関係会社の有識者を集結させたり、人材の質の高さと厚みに圧倒されました。特に仕訳共通化は経理の専門家もアサインし、リードしていただいたからこそ、実現できたと思います」と話す。

これに対し、福山氏は「各駅ビルの切替前には、一定期間を設け、各種帳票の現新比較や、ユーザテストに協力していただきました。マスタ情報や取引データを元に、DBOで精算帳票等の各種帳票を出力し、想定通りの結果になることを確認する等、切替後も想定通り業務が実施できることを、実際に利用していただくユーザーにも確認していただきました。この期間を通して、さまざまなご指摘や、既存業務とのギャップによる課題が発生しましたが、一つ一つ丁寧に解決を図っていくことで、業務やシステムが変わることに対するユーザーの不安を払拭しつつ、順次切替を進めていくことができました」と言う。

小林氏は「プロジェクトをスケジュールファーストで進めてきましたが、なんとか2023年10月に全社切替が終わり、システムの共通化を完遂できました。駅商業施設の共通ポイントサービスも無事スタートでき、鉄道データとの連携も実現しました。困難だと思っていた3つのプロジェクトを同時に完遂することができました。TOKAI STATION POINTも順調に会員数が伸び、CRM強化による増収を実現していきたいです」と意欲を示している。

生産性向上に向けた機能改善や
競争力強化へのDBO機能追加に期待

会員管理システムとのテナントマスタや、ポイント精算の連携、決済サービスとの端末管理、決済の還元データの連携、分析プラットフォームへの各種売上データの連携など、DBOを中心として各種システムとのシームレスな連携が実現し、期待通りの機能を有している。今回は売上管理システム(DBO)、会員管理システム(CAFIS Explorer)、決済サービス(CAFIS Arch)、分析プラットフォームを一体的に構築しており、一部課題はあるものの、運営に大きな支障はないという。中でも分析プラットフォームはこれまで一部の駅ビルでしか有していなかった機能で、旧ツールを活用し、データの見える化を実現している。ドリルダウンで詳細分析ができるようになるなど、データに基づく施策判断をする上でも各社から好評を得ている。

図2 NTTデータの仕組みの実装範囲

現状では、スケジュールを優先したため個別のカスタマイズはほとんど無く、駅ビル会社で運用する際にはギャップが生じている部分もあるが、SaaSとしてのサービス改善や個社のカスタマイズ等、今年中には改修できる計画になっている。小林氏は「将来的には売上管理業務などの集約も検討すべきと考えているため、DBOには引き続き生産性向上に向けたさらなる機能改善やSCとしての競争力強化に向けた機能追加が必要です」と期待を膨らませている。JR東海の次の戦略については「プロジェクトとしてはこれがフェーズ1と捉えています。今後、この共通プラットフォームを他のグループ会社に拡大していくとともに、鉄道との連携を強化していきます。NTTデータには各システム実装後も、我々の事業パートナーとして、サービス拡大に向けた企画の検討・具現化、データ分析による企画の効果検証などを期待しており、ともに成長していきたいと考えています」と話す。

一方、福山氏は「1stユーザーである駅ビルの切替後、役員の方から『切替までは非常に苦労したが、切替後は非常に便利に使えています。施設・テナント毎の売上情報がタイムリーに可視化されるなど、早速導入の効果が表れています』と感謝の言葉をいただき、駅ビル9社の切替完了後には、JR東海様から感謝状までいただきました」と笑顔を見せる。

DXプロジェクト推進メンバ(JR東海・NTTデータ)

また、松永氏は「DBOは業界の今後の事業成長を共に歩むためのサービスです。単なるシステムの提供や、体制提供だけではなく、新たな事業スキームとして加盟店様の運営を効率化、高度化といったDXを実現しながら、加盟店様と共にNTTデータも事業成長していくことを目的としています。業界共通としての課題認識で、ステークホルダであるテナント様も期待されている売上報告の標準化や、人が行っている機械的な確認作業をAIや自動化ツールなどテクノロジーを積極活用することでBPRし、弊社が主体的にサービス力を強めていこうと考えています。DBOが新しいショッピングセンターのスタンダードの幕開けになれるように、取り組んでいきます」と決意を示している。

お問い合わせ先
株式会社NTT データ
ペイメント事業本部
カード&ペイメント事業部
〒108-0073 東京都港区三田3-10-1
アーバンネット三田ビル4F
URL:https://www.nttdata.com/jp/ja/contact-us/

 

 

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