2023年3月4日7:10
グローバルなオンライン決済サービスのプラットフォームを展開するPayPal(ペイパル)の日本事業統括責任者であるピーター・ケネバン氏は、2023年の日本事業の振り返りと2024年の戦略について語った。越境ECの拡大とグループ会社のPaidy(ペイディ)との連携強化に引き続き取り組むとともに、SMB(中堅・中小企業のビジネス)が簡単に始められる決済機能を強化する方針を明らかにした。(決済・金融・流通サービスの強化書2024【PR】)
ペイパル 日本事業統括責任者 ピーター・ケネバン氏
使いやすい「請求書ツール」で実績
インボイスなどニーズを掘り起こす
ペイパルは、200カ国以上で使用されており、3,500万の加盟店を含む4億2,600万のアカウントを有している。1年約250億回の取引を処理しており、6兆ドルと言われるeコマース市場の4分の1を占めている。ケネバン氏は「日本の2023年末時点のアクティブアカウント数は、前年比60万増の1000万(Paidyのアクティブアカウント数含む)となり、日本事業の収入・収益は順調に伸びています」と胸を張る。
ペイパルは最近では既存ユーザーのエンゲージメント向上に注力しており、1アクティブアカウント当たりの取引数を示すTPA(Transactions per active account)の指標を重視している。グローバルでは2023年のTPAは58.7と、前年対比で14%増加しているといい、日本事業でも、この指標の上昇に確かな手ごたえを感じている。具体的には、サブスクリプションビジネスが好調で、デジタルコンテンツやトラベルサイトが伸びているそうだ。
ケネバン氏は「これからは、アクティブユーザー数を上げるだけではなく、エンゲージメントを上げるための取り組みが求められる時代です。ユーザーにバリューを感じてもらえるサービスを提供し、繰り返しペイパルを使って頂けるように体制を強化していきたいです」と力を込める。
成長戦略としては、SMB向けのサービスを強化する方針だ。ケネバン氏は「ペイパルの日本事業としては越境ECが強いという評価が定着していますが、実は国内ではSMB向けのサービスも使い勝手が良いと評判です」と話す。
その代表的なサービスが「請求書ツール」だ。1点モノの商品を売る場合、決済ごとに請求書を作り、発行する必要があり、それをECサイト上でカスタマイズするのは労力がかかる。ペイパルの「請求書ツール」を使えば、サイトの仕様変更などをしなくても、3クリック程度で完結できる仕組みだ。単に個別の請求書発行ができるというだけではなく、個々の顧客ごとに柔軟な価格設定が可能だ。
ケネバン氏は「日本のSMB市場は眠れる宝物です。デジタル化のニーズは多いのに、それに向けた使いやすく、安価なサービスを提供している会社は数少ないと感じています。ネットに慣れていないけど、請求業務を効率化するためにオンライン決済を手軽に導入したいというニーズに応えられる使いやすいサービスを拡充することを検討しています」と話し、決済機能を更新したサービスを提供する計画を明らかにした。
SHEIN、AliExpressなどキャンペーン効果
売上が10倍以上伸びたケースも
「世界中で最も信頼されるデジタルウォレットの一つ」を自負するペイパルのネットワークを活用した越境ECの拡大戦略については、日本の加盟店の越境ECをサポートする取り組みをさらに加速させている。
越境ECによる成長を実現した日本企業や日本の魅力ある商品などの情報を、Webサイトなどを使って積極的に発信しており、例えばイラストコミュニケーションサービスのpixivなど、日本の魅力的な商品・サービスを提供している企業のストーリーをアメリカのペイパルユーザー向けに発信している。
さらに、日本のユーザーが世界中の加盟店で安全かつ簡単にオンラインショッピングを楽しめるウェブサイト「海外ショッピングハブ」を昨年公開した。日本の消費者に対して、海外の魅力ある商品・サービスを発信するのが狙いで、成果があったそうだ。
オンラインショッピングを楽しめるウェブサイト「海外ショッピングハブ」
ショッピングハブでキャンペーンを実施した加盟店としては、SHEIN、AliExpress、Ktown4u、LOOKFANTASTIC、Wiggle、Olive Young、MUSINSAなど。加盟店によってはキャンペーン開始後に売上が10倍以上伸びたケースもあったという。また、Ktown4u, Olive Young, MUSINSAなどの若い女性に人気の韓国加盟店での取り扱いが大きく伸びたといい、そうしたK-POPの人気を背景に今年もWeverse Shop JAPANとのキャンペーンを3月末まで実施している。
ケネバン氏は「海外には日本では購入できない魅力的な商品がたくさんあります。先日、スーパーボウルが開催されましたが、アメフトの手に入りにくいジャージなどが良い例です。今後もさまざまな加盟店とタッグを組んで海外の商品を紹介するなど、日本の消費者がワクワクするような取り組みを考えていきたいです。一方、海外進出の方も、日本の事業者は『石橋を叩いて渡る』ように慎重ですが、新たに海外販売に踏み出そうとされている事業者をペイパルの優れた製品・サービスで後押ししたいです」と越境ECによる日本と海外のモノやサービスの流通拡大の先導役を果たす覚悟だ。
Paidyの成長スピード維持を最優先に
クロスセルなどのシナジー効果を創出
あと払い(Buy Now Pay Later:BNPL)サービスを提供しているPaidyとのシナジー効果の創出について、ケネバン氏は「クロスセルなどで、効果が出始めているシナジーもありますが、まずは彼らの成長スピードの勢いを維持することを最優先にしています」と話している。
ペイパルは2024年1月、社長兼CEOの アレックス・クリス氏が“First Look”と題したイベントの中で今後のプロダクトロードマップを紹介した。ペイパル決済とVenmo(ベンモ)を中心に2024年に 6つの新しいイノベーションを展開していく。AI(人工知能)を活用した取り組みを強化することで、Eコマースに変革をもたらすという。
ペイパル 社長兼CEOの アレックス・クリス氏が2024年に展開する 6つの新しいイノベーションを発表
ケネバン氏は「これらのプロダクトにおけるイノベーションは米国から始まり、次第にグローバルに広がっていくでしょう。日本にもその波がやってくることを楽しみにしています。それまでの間、日本の政府や企業と協力し、日本のデジタル化の基盤づくりをお手伝いすることで、デジタル化や越境ECに取り組もうとしているが、一歩が踏み出せない顧客を支援していきます」と話している。
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