コンテンツへスキップ

広島電鉄が乗車券システムをABT方式の「MOBIRY DAYS」に刷新 定期券購入やチャージも窓口を通さずスマホアプリで完結

2024年4月23日8:00

広島電鉄は2024年9月から、乗車券システムを刷新。ABT(アカウント・ベースド・チケッティング)方式の「MOBIRY DAYS」をスタートさせる。2008年に導入した広島地区の鉄道・バス共通のICカード乗車券「PASPY」は、2025年3月をもって取り扱いを終了し、新システムに一本化する。長期的に見たメンテナンス費用などのコスト削減が、最も大きな狙いだ。「MOBIRY DAYS」は運賃支払い、定期券購入、チャージなどをすべてスマホアプリで行う仕組みだが、スマホを利用できない人には専用ICカードを発行して対応。「PASPY」で提供してきた、現金払いより運賃を10%割り引くサービスなどは、新システムにそのまま引き継がれる予定だ。

広島電鉄 交通政策本部 新乗車券システム推進部長 大上明紀氏

アプリにクレカまたは銀行口座を紐づけ
オートチャージの利用も可

広島電鉄は2024年9月、ABT(Account Based Ticketing:アカウント・ベースド・チケッティング)方式の乗車券システム「MOBIRY DAYS(モビリーデイズ)」をスタートさせる。ABT方式とは、IDや利用情報・残高情報を乗車券に記録するCBT(Card Based Ticketing:カード・ベースド・チケッティング)と異なり、乗車券にはIDのみを記録して、利用情報や残高情報はクラウド上のサーバで管理する仕組み。自前でサーバを持つ必要がなく、車載機で高速な計算処理を行う必要もないため、システムの低廉化を図ることができ、システム変更にも柔軟に対応できる。新システムは日本電気(NEC)、レシップとの共同開発によるもので、ABT方式による乗車券システムの商用化は日本初のケースとなる。

スマートフォンアプリのホーム画面

広島電鉄では2008年に広島地区の鉄道・バス共通のICカード乗車券「PASPY(パスピー)」を導入。「PASPY」はこれまで累計で190万枚が発行され、現在同社の利用客の約8割に使われているが、保守契約期限を迎える2025年3月をもって取り扱いを終了し、システムを「MOBIRY DAYS」に一本化する。なお、「PASPY」で提供してきた、運賃を現金払いより10%割り引くサービスなどは、そのまま「MOBIRY DAYS」に引き継ぐ予定である。

「MOBIRY DAYS」の利用にあたっては、スマホアプリをダウンロードし、会員登録を行う必要がある。このとき併せて、クレジットカードまたは銀行口座を登録する。電車・バスの利用の際は、乗車・降車時にアプリに掲示されるQRコードをリーダにかざして運賃を支払う。定期券購入やチャージも、窓口を通すことなく、アプリ上で完結。残高が一定金額を下回った場合に自動的に充当するオートチャージ機能を利用することもできる。

スマートフォンアプリで乗り降りできる

スマホが使えない利用客には、ICカードを発行して対応する。カードは申込後に自宅に郵送、もしくは窓口で受け取り。専用のWebサイトで会員登録や必要な操作を行うことにより、定期券の購入やチャージが可能になる。

専用ICカードでも利用可能

スタート当初は、ICカードの「PASPY」からスマホに切り替えることに不安を感じ、ICカードの発行を希望する利用者が多いことが見込まれる。しかしすべての操作をアプリだけで完結できる利便性が理解されるにつれ、徐々にスマホの利用比率が高まっていくものと同社は見ている。

本格運用開始に向けて実証実験を実施
マイナンバーカードとの連携をテスト

同社では、日常的に電車・バスを利用する地元住民向けサービスとは別に、国内外からの旅行者向けのMaaSアプリ「MOBIRY」を展開してきた。同社では旅行者向けサービスとして、エリア別、時間単位(8、24、48、72時間)のプランを用意しており、利用者は事前にスマホもしくはパソコンから5カ国語対応のWebサイトにアクセスし、クレジットカード決済でチケットを購入。当日はスマホに表示したデジタルチケットを乗務員に見せて、電車・バスを利用する。このチケットをゆくゆくはQRコード化し、「MOBIRY DAYS」で使用するQRコードリーダを用いて、タッチして乗車する仕組みに変える予定だ。

「MOBIRY DAYS」の本格運用に向けて、同社では2024年2月1日から2月末まで、バス阿戸線(広島県安芸郡熊野町~広島市安芸区)で実証実験を行った。この実験では、マイナンバーカードを連携したICカードでバスを利用した地域住民のバス運賃を半額にする施策を実施した。

プロジェクトの陣頭指揮をとる同社 交通政策本部 新乗車券システム推進部長 大上明紀氏は、「経過は順調です。9月には弊社並びに広電グループのすべての電車・バスで利用可能な体制でスタートし、その後順次、地域の商業施設なども含めて連携先を広げていきたいと考えています」と話す。

ただ1つ課題になりそうなのが、「MOBIRY DAYS」においては「Suica」「PASMO」など全国相互利用に対応する10種類の交通系ICカード、いわゆる10カードが使えなくなる可能性が高いことだ。同社では関係各社との調整を試みつつ、解決の道を模索中である。

 

The post 広島電鉄が乗車券システムをABT方式の「MOBIRY DAYS」に刷新 定期券購入やチャージも窓口を通さずスマホアプリで完結 first appeared on ペイメントナビ.