2024年4月24日8:10
関西を中心とした鉄道・バス事業者でつくるスルッとKANSAI協議会は2024年6月から、QRコードを活用したデジタル乗車券サービス「スルッとQRtto(スルッとクルット)」を開始する。同協議会の加盟事業者の利用者が、共通のサービスを通してチケットレスで電車やバス、観光施設などを利用できるようにすることで、乗客の利便性向上や加盟事業者のコスト削減を図る。まずは大手私鉄など7社でサービスを始め、順次対応事業者を拡大していく。
スルッとKANSAI上席執行役員 松本康宏氏
専用ウェブサイトで乗車券を事前購入
鉄道はスマホにQR表示、バスはQR読み取り
スルッとKANSAI協議会は、関西を中心に岡山、静岡を含む60の鉄道・バス事業者で構成。2004年から交通系ICカード「PiTaPa(ピタパ)」を展開するほか、インバウンド向けの鉄道・バス乗り放題チケット「KANSAI THRU PASS(カンサイスルーパス)」などの企画乗車券を販売している。同協議会によると2024年1月現在、「PiTaPa」の会員数は約330万人。
「スルッとQRtto」はスマートフォン向けのデジタル乗車券サービス。同協議会が電子決済システムなどを手がけるウェルネットと2022年から開発を進めている。ネーミングコンセプトは「QR+くるっとまわる」。QRコードを活用して「くるっと関西一円を楽しめる」、「さまざまなところへお出掛けする感覚」を表した。
利用方法(スルッと KANSAI 協議会)
利用者は事前に専用ウェブサイトで乗車券を購入。電車を利用する際はスマートフォンの画面に乗車券のQRコードを表示し、駅に設置された対応改札機にタッチして乗車する。バスの場合は、降車時に車内に掲示されたQRコードをスマホのカメラで読み取り、利用内容が表示された画面を運転手が確認する。観光施設などでは、バスと同様に施設に掲示されたQRコードをスマホで読み取るか、利用したい施設名をスマホ上で選択し、利用内容が表示された画面を施設のスタッフに確認してもらい入場する。インバウンドにも利用してもらうため、専用ウェブサイトは日本語、英語、中国語、韓国語の多言語対応を想定している。
2024年6月に予定しているサービス開始時には、加盟事業者のうち、大阪市高速電気軌道(Osaka Metro)、大阪シティバス、近畿日本鉄道、京阪電気鉄道、南海電気鉄道、阪急電鉄、阪神電気鉄道の7社で導入する。まずは現在磁気カード等で販売している企画乗車券を扱う予定。近鉄や南海は、自社ですでにQRコードを利用した乗車券を展開しており、他の事業者もサービス開始に向け、QRコード乗車券に対応した改札機の導入を進めている。
磁気の乗車券をデジタルに置き換え
インバウンドも想定しウェブサービスに
なぜ同協議会でQRコード乗車券のサービスを構築することになったのか。同協議会は以前から、乗客の利便性向上や加盟事業者の業務効率化のため、現在の磁気カードや磁気切符のデジタルへの置き換えを検討してきた。例えば磁気カードの企画乗車券の場合、カードを受け取る必要があるが、購入できる駅が限られている、インバウンドは引き換えに手間がかかるなどの課題があった。スマホでのデジタルサービスと切符の脱磁気化を両立でき、媒体コストが安価なQRコードを採用。日常的に対象地域の交通網を使わないインバウンドやライトユーザーの利用を想定し、スマホへのダウンロードが必要なアプリではなくウェブ上でのサービスの開発を進めてきた。
その際に意識したのは「連絡運輸」(関係事業者同士で締結した契約に基づき、異なる交通事業者の路線と直通する乗車券等を発売し乗客を輸送すること)だ。同協議会の事業を管理するスルッとKANSAI上席執行役員 松本康宏氏は「協議会の加盟事業者が共同で使える仕組みにしました。スルッとQRttoというインフラを協議会が提供し、それぞれの加盟事業者がそこに乗車券という商品を出品し、販売するイメージです」と話す。ただし、QRコード乗車券の利用には改札機の整備が必要となる。対応改札機の導入などは各事業者での対応となるため、整備の状況に応じて対応事業者を拡大していく予定だ。
「スルッとQRttoはサーバーで情報を一元管理しますので、ネットでの商品・サービスの購入や他のネットサービスとの結合もやりやすくなります。外部の事業者との連携もゆくゆくは考えられる基盤ができると思っています」と松本氏。「地域の交通機関のネットワークで広く使える基盤を作ることには大きな意義があります。難易度は高いと思いますが、まずは協議会の加盟事業者の方々と力を合わせてサービスインし、関西発の新しいサービスをアピールしていきたいです」と力を込めた。
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