2024年7月24日8:00
KDDIは、2024年6月7日から、日本の国際通信の歴史を実物の機器や資料で解説する施設「KDDI MUSEUM」(東京都多摩市)において、スマートフォンに搭載された高精度位置情報UWB(Ultra-Wide Band)機能を活用した自動音声ガイドシステムの実証を行っている。UWBは決済の国際ブランドや自動車メーカーも認証や支払いのツールとして検討を行うなど注目されているが、今回はKDDIにUWBに着目した背景、「KDDI MUSEUM」での実験の成果、今後の可能性について話を聞いた。
KDDI 先端技術統括本部 システム戦略部 コアスタッフ 大野勝弘氏(右)と同部 スタッフ 千原啓太氏
UWB対応の自動音声システムを独自開発
高精度な位置測位が可能で、スマホ搭載も進む
KDDIの先端技術企画本部 システム戦略部は、ワクワクの源泉となる技術をグローバルに収集し、新しい技術を使った実証試験を実施することで、KDDIのアセットや商品、プラットフォームとして形にしている部署だ。UWBも今後、さまざまな用途で活用される可能性を秘めているという。
「KDDI MUSEUM」の受付横で自動音声ガイド実証を案内
「KDDI MUSEUM」で実証した自動音声ガイドシステムは、KDDIが独自に開発したものだ。KDDI 先端技術統括本部 システム戦略部 コアスタッフ 大野勝弘氏は「UWBを音声ガイドに使用することで高い没入感が得られる可能性があります」と話す。
KDDIは2023年11月にジブリパークのある愛・地球博記念公園(愛知県長久手市)内にて、誤差数㎝の高精度位置測位(GNSS)を活用し、映画の世界に入り込んだような感覚を楽しめる「ジブリパークの音響世界」の体験会を行った。大野氏は「人数限定で体験会を行い、位置にあった音(BGM)が鳴ると没入感や体験価値が向上したため、屋内でも正しい位置情報が分かり、音声が流れるのがどれほど気持ちいいかを模索しようかと考えました」とUWBでの実証の経緯を説明する。
UWBはiPhoneでも11以降に搭載されており、今後Androidを含め、さらにスマートフォンへの搭載が進むと見込まれる。UWBは、高精度な位置測位が可能で、「高精度になるほど体験価値が向上し、お客様のUX(ユーザーエクスペリエンス)が向上すると考えています。今回はiPhone15をお貸し出しています」と大野氏は語る。
音声を自動再生、10~50cm級の精度で収まる
狭いエリアの設定で顧客体験向上へ
今回の検証では、受付で利用者にスマートフォンを貸し出し、「KDDI MUSEUM」内の各展示エリアに近づくと展示内容を説明する音声ガイドが自動再生される。UWBによる高精度な位置情報によって隣接した展示物を見分けることが可能だ。実際に体感された来館者からは「想像以上に楽しい」「観覧に新しい可能性を感じた」という意見もある。なお、使用したイヤホンは、骨伝導で外部の音が聞こえるようにしている。
位置に応じ自動的に音声ガイドを提供するイヤホンを装着して体験可能
KDDIでは、総務省が電波法としてUWBを開放した2006年の議論にも参加するなど、古くから同技術に注目してきた。同グループでは、スマートフォンにUWBが搭載されたことを起点に具体的な調査を開始。新たなスマートフォン技術の活用の可能性を探っている。大野氏は「iPhoneで継続して搭載されるビジョンが見えてきましたので、音声ガイドで使えないか模索しました。音声ガイドは位置情報との相性がよく、一般のお客様が使ったときに違いが分かりやすいです」と述べる。また、搭載端末の所有率も徐々に増えているため、UWBの利活用も今後活発化するとみている。特に、人流解析、ナビゲーション、セキュリティといった活用は今後模索していくそうだ。また、決済分野でも国内でジェーシービーがリリースを出しており、運用方法やセキュリティ面が担保できれば利活用が進む可能性がある。
体験用スマートフォンにエリアを表示している
今回、国内でスマートフォンに搭載されたUWBを始めて運用したが、「一般的に説明されている10~50cm級の精度の中で収まっています」と大野氏は成果を述べる。UWBはBLEに比べて精度が高く、狭いエリアを設定できるため、顧客体験を向上できると期待する。一方で、iPhoneの各端末により若干の誤差があり、持ち方などにより音声が出るタイミングに差が出ることも分かった。大野氏は「誤差としては30cmほどがアベレージとして出ています。建物の構造や置いてある物の場所も影響しており、広いところであれば10cmほどの誤差が出ますが、入り組んだ構造にアンカーを設置すると、電波の影響を受け、測位精度が50cmに落ちることもあるので、調整しています」と話す。結果として、大きな誤差が発生することはなく、安定動作が確認できている。
今後は、機械学習を使ってカスタマイズすることで、さらに測位精度は高まるとした。現在は単独アンテナで電波を出しているが、例えば、3つ、4つのアンテナで推測すればさらに精度はアップする。また、モバイルに搭載されているUWBの機能もさらに高めていけるとした。
KDDI MUSEUMは、2020年に東京都多摩市にオープンした企業ミュージアム。約150年にわたる日本の国際通信の歴史と日本の通信の自由化の意義を知り、最新の5G技術体験などを通じて通信を身近に感じることができる
決済端末や車の鍵などへの搭載に期待
スマホ搭載の加速でさらなる利活用が進む
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The post KDDIがスマホ搭載のUWB活用で展示施設の体験向上、高精度な位置測位技術の利活用を検討へ first appeared on ペイメントナビ.