2024年7月31日8:00
PayPay証券では、6,400万の登録ユーザーを有するキャッシュレス決済サービス「PayPay」の決済アプリ上で資産運用ができる「PayPay資産運用」の仕組みを2022年8月にスタートし、新NISAの追い風を受けて口座数を拡大している。また、PPSCインベストメントサービスが提供する「PayPayポイント運用」からのサービス流入も順調だ。さらに、PayPay、PayPay銀行、PayPayカードなどとのグループシナジーにより、顧客利便性を向上させている。今回は PayPay証券 代表取締役社長 番所 健児氏にサービスの現状やPayPayとの連携効果、今後の目標などについて話を聞いた。
池谷貴
PayPay証券 代表取締役社長 番所 健児氏
新NISAで一番の選択肢を目指す
口座数は6月末で117万口座超に
――貴社の現在の証券業界での立ち位置について聞きたい。
番所:新NISAで新しく資産運用を始めている未経験者や初心者の方々にサービスをお届けしており、一番の選択肢となることを目指しています。『はじめての資産運用はPayPay証券』として、今の証券業界でユニークな存在となっています。口座数も昨年度倍増させ、2024年6月末で117万口座超、新NISAは取引の取扱開始から半年で30万口座超となり、NISA口座に関して言えばオンライン形態では第4位まで成長しています。
――新NISAスタート後の反響はいかがか?
番所:良い反響をいただいており、それが継続している状況です。当社でNISAをお申込みいただいている方々の95%はこれまで他の金融機関でNISA口座を開設していない新しくお申込みいただいた方々です。株式投資未経験の方がはじめて資産運用を経験されており、初心者層は約70%ですので、まさに新NISAではじめて資産運用を開始された方に選ばれています。
――PayPayとの連携によるシナジー効果について聞きたい。
番所:直近では「PayPayアプリ」からの流入がほとんどで、PayPayプラットフォームの活用ができています。新NISAの獲得競争がネット証券の間では起きていますが、当社は新規口座の獲得においてもマーケティングコストはほとんどかけていません。おそらく数十分の1や100分の1です。新NISAの選択肢として、SBI証券や楽天証券の勢力に割って入る第三極となっています。これはPayPayとの連携の大きな成果です。PayPayを使われている方がコンビニエンスストアで決済する感覚で新しく投資信託や株を購入する体験ができていることは大きな意義があると考えています。
――PayPayを日常的に利用している人がPayPay証券のサービスを利用しているということか?
番所: PayPayを日常的に利用されている方が使われています。PayPayは、決済から金融アプリとして発展することに力を入れています。金融アプリとして機能強化に取り組む中で、Win-Win(ウィン・ウィン)の存在として共に育っています。PayPayのトップ画面やウォレット画面の改修、KYC(本人確認)情報の連携、PayPayポイントを活用したマーケティングも進めており、この連携は一段と深まっていきます。
口座開設者の90%がポイント運用の経験者
PayPayの金融アプリ化に貢献
――1,700万のポイント運用からの申し込み導線の強化について聞きたい。
番所:これから加速度的に強まっていくと思います。ここもと口座開設いただいた方の90%がポイント運用の利用経験者です。ポイント運用は疑似運用体験とうたっており、リアルマネーで資産運用をするのは抵抗がある方がほとんどの中、ポイント運用を経験された方が証券口座の開設やNISA口座の開設に至っていることは大きな意義があり、これまで貯蓄から投資へと叫ばれる中、なかなかできなかったことです。
流入の一番の要因は、ポイント運用のプロダクトの良さです。何より資産形成ですから、ユーザーが金融リテラシーを身に着けながら使っていただくことが重要であり、我々も長い目で見ています。ポイント運用をご利用いただくと同時に、「資産運用の1st STEP」という当社のオウンドメディアを案内して、長期・分散・積み立ての資産形成を学んでいただきながら活用いただいています。そこに価値を感じていただけるユーザーが新NISAの口座を開設されています。
――他のPayPay関連サービスとのクロスユースについてはいかがか?
番所:これまで一般的に証券口座を初めて利用する上での一番の不安はお金の入金でしたが、4月からPayPay銀行とPayPay資産運用を直接紐づけており、PayPay残高はもちろんPayPay銀行の普通預金残高からもスムーズに有価証券の購入ができるようになったことから非常に好評です。また、PayPayはデジタル給与払いに申請していますので、ここからPayPayの金融アプリ化はさらに進み、当社としても今後、直接積み立てでの購入を提供できる形でサービスを発展させていきたいです。
PayPayカードとのシナジーとして、「クレジットつみたて(クレカ積立)」は好評をいただいています。口座を開設してから「PayPayクレジット」を利用して投資信託の購入をする方は多いです。
このように、PayPayブランド金融とのクロスユースは進んでいます。当社は、トータルで見たときに収益性も考慮したうえでサービスの立ち上げを行っており、サステナブルに継続してサービスを提供できています。
クレジットつみたて(クレカ積立)のポイント原資は?
アプリのアクティブユーザーは多い
――PayPayカードでのクレジットつみたて(クレカ積立)のポイント付与のコストについて聞きたい。
番所:原資はPayPayとPayPayカードが負担しており、当社のマーケティングコストはかかっていません。ユーザーへの還元は行いますが、口座開設だけで何千円、何万円も付与することはこれから資産運用を始める方への本筋ではありません。本来はユーザーが資産運用を始められる中で、長期・分散・積み立てという観点で始めることが大切です。ポイント経済圏に注目が集まる中で、ポイント付与はしておりますが、ポイントを餌に口座開設を促すのは違うというスタンスです。世の中が新NISAで盛り上がれば、いつも使っているPayPayからユーザーがお申し込みいただけるのは我々の強みです。
――現在、PayPay資産運用のアプリページはどの程度定期的に開封されているか?
番所:この点は他社と比較して相当高いと思います。PayPay自体がほぼ毎日使われるスーパーアプリで、ユーザーIDやパスワードを入力することなくPayPayアプリ上で開けますので、PayPayからスムーズにご自身の運用状況を確認でき、有価証券の売買ができます。PayPayと組んでいること、モバイルで行っていることが大きく、アプリのアクティブユーザーは多いです。
――逆に、現状の課題はどう捉えているか?
番所:我々の事業はネット証券では一概に比較できないところがあります。ネット証券はフルサービスラインアップの事業基盤があり、これまでのNISAや新NISAをきっかけにサービスを伸ばしていますが、我々は資産運用業として新しいビジネスモデルにチャレンジしていく考えです。政府の資産運用立国に貢献するのがパーパスです。NISAは立ち上げて間もないところで第三極として展開しており、新しく資産運用を始められる方に選ばれるのは意義があることです。日本の社会課題を解決できていると胸を張って言えます。
課題として、ニュービジネスだと思っており、収益や黒字化はこれからです。FinTech(フィンテック)のビジネスはユーザーを獲得するのは大変ですが、PayPayと組んだ強みを感じており、開設口座数が100万口座を過ぎて実感していますが、黒字化に着実に向かっています。ストックビジネスとしてビジネスは長い目で見ていますが、その完成に向けて手ごたえを感じています。
ネット証券3番手の地位も早期に達成へ
新NISAで新規に開設する証券口座で一番を目指す
――PayPayは若いユーザーが多いイメージだが、富裕層の獲得はいかがか?マスマーケティングの構想についても聞きたい。
番所:まとまった資金を持たれた方も当社の口座を開設いただいています。デジタルで完結する手軽さはニーズがあります。今獲得に力を入れているのは、これから資産形成を始められる方ですが、当社のサービスを体験し、もっとアクティブに運用をされたいニーズに対しても応えていきたいです。長い目で見たとき、サービスを拡大していく考えはあります。
マスマーケティングに関しては否定しませんが、PayPayと組んでいることを上手く活用していきたいと考えており、テレビCMに予算を投下しなくても認知はあり、ユーザーに選んでいただけています。我々として、よりユーザーを選んでいただけるプロダクト開発や改善活動に予算を投下していく予定です。
――最後に今後の目標についてはいかがか?
番所:2022年度末50万、昨年度末は100万口座を超えるなど倍々で成長しておりますので、そのペースは今年度も継続していきます。新NISAの口座開設数は昨年度以上に伸ばしていきたいと思っています。ネット証券での3番手の地位も早期に達成していきます。
社内的な口座の目標数はありますが、PayPayがキャッシュレスのモバイルペイメントで№1を達成しているように、我々は新NISAで№1になりたいと考えています。政府が5年以内(2027年まで)に1,700万口座を倍増させることを目標にしていますが、新NISAで新しく資産形成をする方が開設する証券口座で一番を目指します。数年以内に数百万口座は達成できると思います。当社のパーパスである初心者層を含めたあらゆる方に資産運用をお届けすることをPayPayとともに実現していきたいですね。
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