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3-Dセキュア導入によるコンバージョン率低下をStripeで大幅改善! 〜年間150兆円の決済データとAIを活用した高度な不正対策と売上向上の実例を公開〜(後編)

2025年4月8日8:30

大手エンターテインメントの事例
多角的アプローチにより3-DS認証レートを大幅改善

安部:ではここからは、Stripeのソリューションを導入して効果を上げている実例をご紹介いたします。まず、今泉が担当している事例から紹介いたします。

モデレーターのストライプジャパン株式会社 ソリューションアーキテクト 安部 草平 氏(右)とプレゼンターの同社 テクニカルアカウントマネージャー 今泉 徹 氏

今泉:はい。ご紹介するのは、デジタルのサービスを提供している大手エンターテインメントのお客様です。事業規模は年間数百億円と非常に大きく、決済単価は5,000円から3万円。基本的にはアプリでサービスを提供していますが、2023年からアプリ外決済を開始しました。社内に不正対策専任チームがあるのですが、アプリ外決済を新たに始めたということで、この点では運用に不慣れでした。3-Dセキュアの導入には前向きで、不正利用が少し増えてきた2023年から、2万円以上の決済に3-Dセキュアを導入しましたが、コンバージョン率の低下、カゴ落ちの増加が課題として浮上してきました。その解決策をStripeが支援させていただきました。

安部:あるカード発行会社の決済では3-Dセキュアを通ったものの7割以上が却下されていたということですから、かなり深刻な状態だったのですね。

今泉:はい。Stripeの「レポート」の画面は、決済の情報を確認していただくことができます。決済のオーソリや、最終的な決済の可否を見ることができます。また、支払い認証の画面では、3-Dセキュアのパフォーマンスを確認できるようになっています。

安部:「支払いの分析」はオーソリや決済の最終的な支払いの成功率などが表示される画面で、現場でオペレーションを担う方々が日々ご覧になって、異常検知にも役立ててくださっている画面ですね。

今泉:そうです。これを見ていただくとわかるのですが、オーソリの状況は全体的には安定していたのですが、あるタイミングでガクンと落ちていました。画面上には、前の期間と比較できるようにグラフを重ねて表示していますが、明らかに前期より落ち込んでいるところがあります。われわれはここにフォーカスしてトラブルシューティングをさせていただきました。具体的にいいますと、この期間、JCBの承認率が大きく下がっていたのです。

安部:VisaやMastercardは落ち込んでいないのに、JCBだけが顕著に落ち込んでいたのですね。

この画面では、カードブランドごとの比較のほかに、どのようなことがわかるのですか。

今泉:発行国ごとのカードの比較もできます。

安部:日本のお客様の中には海外カードを受け付けないところも多いと思います。Stripeを導入しているお客様はどうですか。

今泉:たとえばサムソナイトでは、以前は海外カードを受け付けていませんでしたが、Stripeに切り替えたタイミングで受け付け可にしました。その後特に問題は発生しておらず、逆にその部分が売上アップにつながっています。

先ほどの事例に話を戻しますと、JCBに関して問題があることが見えたので、さらにこの課題を深掘りしました。すると、一般的な支払い拒否、つまり、理由が開示されない支払い拒否が増えていることがわかりました。

安部:資金不足などではなく、理由がよくわからない支払い拒否が多かったということですね。そこから先、どのようにして問題を特定していったのですか。

今泉:Stripeには、Σ(シグマ)と呼ばれるSQL、クエリを書く製品があるのですが、これを用いて現状分析を行いました。SQL、クエリを書くにAIを活用し、その背後には分析のベースとしてさまざまなデータベースを用意しています。このようにして問題を特定したうえで、セキュリティの見直しを行ったり、パートナーとお話をさせていただいて、調整を行いました。

安部:カード会社に判定基準を変えていただくのは難しい、できないという話をよく聞くのですが、可能なものなのですか。

今泉:これは正直、われわれのほうでは決められないことです。できることとしては、きちんとコミュニケーションをとっていくことだと思っています。これまで築いてきたパートナーシップをもとに、お話しさせていただくということですね。

安部:3-Dセキュアを導入しました、不正利用は減りました、でもカード決済の承認率が下がってしまったので、そのカードを特定して、データを渡して、問題を解決した。問題発覚から解決までに、どのくらいの期間がかかりましたか。

今泉:3日くらいです。

安部:その結果、実現した3-Dセキュア認証レートは98%、うちフリクションレスが65%というのは、相当に良好な数字だと思います。このぐらいのパフォーマンスは珍しくないものなのですか。

今泉:お客様の状況によって違いますので一口には言えません。不正利用が多い加盟店の場合にはもう少し低くなることもあります。

高価格帯商品を取り扱う家電ECの事例
データを踏まえてルールを作成し成功につなげる

安部:次に私が担当したお客様の事例を紹介いたします。自社ECを運用し、平均単価15万円の高価格帯の家電を販売しているお客様です。技術レベルが高く、ECサイトも相当こだわってつくり込んでいます。われわれから「決済成功率を3-Dセキュアモデルで解決します」とご案内したところ、3-Dセキュアの全件実施により決済承認レートが40%以下にとどまってECサイトが機能しなくなってしまっているという悩みを打ち明けていただけました。PSPを変えるのは大変な決断だけれども、本当に問題が解決するのならそうしたいという切実なご相談をたまわりました。

今泉:決済承認レートというのは、決済の最終的な成功率ということですか。

安部:そうです。決済ボタンを押して、3-Dセキュアが実行され、さらにオーソリが通ってという2つのハードルをクリアして、認証と認可を超えたうえでの成功率が36%くらいだったということです。われわれとしても「絶対できます」とは申し上げられないので、ほかの高級家電販売店の例をご説明するなどしてご納得いただき、導入に至ったという経緯があります。

われわれは2週間とか1カ月で導入を完了するための有償のサービスを提供しています。そのサービスをご提案したのですが、このお客様は技術力のある会社なので、自分たちでやりたい、Stripeのデータを使って自分たちで現状を把握したいということでした。導入直後の不審請求申請率は1.98%。けっこう高い数字です。そういう状況からのスタートでした。

まず見ていただいたのが、ベンチマークです。われわれは2兆円弱の決済額があるネットワークを持っておりますので、同じ業界、同じビジネス、同じ地域というところで、どういうパフォーマンスが出ているかを見ていただくことができます。お客様はこれを見て、われわれのチャージバックレートは1.98なのに、他社は0.01だと驚愕されていました。

今泉: 1.98は正直、非常に悪い状態です。すぐに対応が必要ですね。

安部:お客様が次に注目されたのが、ゲストチェックアウトと会員チェックアウトの差異でした。キーはメールドメインの有無です。何かといいますと、メールドメインがないということは、会員登録をしていないということなので、ゲストチェックアウトになります。このゲストチェックアウトには、正規も不正規も多かったという判定結果が出ました。

その次に見ていただいたのは、リスクスコアです。正規のゲストユーザーのリスクはゼロに近く、リスクスコア30以上になると、チャージバックが発生する不正利用のリスクが高まることがわかりました。

これらを踏まえて、ブロックのルールをつくりました。 メールアドレスを設定していない場合はどんな状況かを見ていただくと、不正請求を50人登録できるのですが、非正規決済で7,533。52件の不正を防ぐために7,500というのはけっこう大変ですよ。

今泉:ここに表示されている件数には、どのようなデータが含まれているのですか。

安部:Stripeで把握できている過去のデータです。間違ったルールを適用することがないように、われわれは期間を指定して、このルールを適用したら、どういうパフォーマンスが出せるかをシミュレーションできる機能を設けています。このお客様にはこの機能を使っていただきました。

これでは正式なルールとは言えないので、さらにリスクスコアによる判定を組み合わせていただきました。リスクスコア30以上をand条件で組み合わせることによって、だいたい30の不正規請求をブロックできて、正規は150。これをブロックしてしまうと問題があるので、ルールを確定せずに、いったんレビューにして判定を保留にするというかたちにしています。このお客様ではおよそ1カ月くらいルールを適用することによって、課題を解決することができました。

今泉:ご紹介ありがとうございました。ほかに高級消費財メーカーでも、同じようにStripe上で分析をして、3-Dセキュアだけに頼らずに総合的な分析・実施を行ったという事例があります。

安部:これらの事例からいくつかの事実が見えてくると思います。PSPを変えるだけでも決済の成功率は大きく変わってきますし、それが企業の収益にも大きな影響を及ぼします。加盟店ごとに不正のパターンは異なりますので、不正対策もデータをもとに、カスタマイズする必要があります。不正対策は3-Dセキュアだけでは不十分で、モニタリングを行いながら、対策の不足部分を補っていくことが必要です。

本日のわれわれのお話が皆様のご参考になれば幸いです。ご清聴ありがとうございました。

※本記事は2025年2月27日に開催された「ペイメント・セキュリティフォーラム2025」の採録記事となります。

■お問い合わせ
ストライプジャパン株式会社
contact/sales

https://stripe.com/jp
https://stripe.com/jp/contact/sales

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