2026年4月1日8:00
和田 文明
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プロフィール キャッシュレス、電子マネー関連のジャーナリスト/ライター、主に欧米、アジアのセキュリティを含むキャッシュレス情報、カスタマーロイヤルティプログラム情報を取材 |
金融技術(FinTech)は、1960年代後半のATMの登場以来、デジタルデポジットや送金アプリを通じて、金融サービス利用方法を大きく変えてきた。AI(人工知能)は、こうしたペイメントにおけるデジタル変革をさらに加速させるための中核的なパワーである。欧米で進む、AI(人工知能)、特に最新の生成AI(GenAI)が決済(Payment、決済・送金)システムにどのような変化をもたらしているか、そして欧米がどのようなルール(規制)を作ろうとしているかについて、5回に分けてレポートしてみたい。
AI(人工知能)の進化により、ペイメント(決済・送金)業界は、かつてないスピードで変革が生じている。特に重要なのは、AI(人工知能)が単なる“自動化ツール”から、自から考えて行動する“AIエージェント”(Agentic AI)へと進化している点である。こうした自律的に動くAI(人工知能)が、今、銀行などの金融機関と顧客との関係を根本から変えようとしている。

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Index(目次) 1、ペイメント(決済)とAI(人工知能)とは |
<参考文献・資料>
・AI in payments: From hype to impact、Payrails
・From consumer AI to agentic payment operations、The Paypers
・How agentic AI can change the way banks fight financial crime – McKinsey、mckinsey.com
・Six benefits of AI in payments for problem resolution – Access PaySuite、accesspaysuite.com
・The Role of AI in preventing financial fraud and enhancing compliance – GSC Online Press、gsconlinepress.com
・AI-enabled anti- money laundering、ey.com
・The AI revolution for payments & tech | J.P. Morgan、jpmorgan.com
・2025 Cross-Border Payments Trends for Financial Institutions | J.P. Morgan、jpmorgan.com
・EU Tech Firms Look to US for AI Funding | PYMNTS.com、pymnts.com
・AI in Fintech – IBM、ibm.com
・LLM Hallucinations: What Are the Implications for Financial Institutions? | BizTech Magazine、biztechmagazine.com
・Automated Invoicing with Generative AI: Streamline Finance – SmythOS、smythos.com
・High-level summary of the AI Act | EU Artificial Intelligence Act、artificialintelligenceact.eueuroparl.europa.eu
・EU AI Act: first regulation on artificial intelligence | Topics – European Parliament、europarl.europa.eu
・GAO-25-107197, ARTIFICIAL INTELLIGENCE: Use and Oversight in Financial Services – Government Accountability Office、gao.gov
・The Impact of Large Language Models in Finance: Towards Trustworthy Adoption – The Alan Turing Institute、turing.ac.uk
・From Automation to Autonomy: How Agentic AI is、Visa
・「AIエージェントが加速するCX革命」、NTT Date
・「最新の決済機能がビジネスに与える影響」、Stripe Japan
・「サブスク業界における規制環境の変化とその影響」、Stripe Japan
・「AIビジネスの拡張」、Stripe Japan
・VisaのHP
・MastercardのHP
・StripeのHP
・Stripe JapanのHP
・Payment Navi
ペイメントとAI(人工知能)に関する用語集
ペイメントとAI(人工知能)の戦略的分析や欧米における最新動向と規制の枠組みなどに出てくる主要な専門用語について、用語集(アルファ別途順)を作成した。
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用語(英語・日本語) |
解説 |
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Account-to-Account (A2A) Payment |
・A2A(Account-to-Account)決済とは、カードネットワークを経由せず銀行口座間で直接資金を移動させる決済を指す |
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Adaptive Learning |
・新しいデータに基づいて、アルゴリズムが自己をリアルタイムで修正・進化させる学習プロセス |
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Agentic AI(または Agentic Commerce)(エージェントAI) |
・エージェントAI(人工知能)とは、自分で考えて行動する自律的なAI(人工知能) |
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AML/KYC |
・AML(マネーロンダリング対策)とKYC(顧客確認)は、金融犯罪を防止するための規制遵守のプロセスである |
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API(Application Programming Interface)(API) |
・API(Application Programming Interface)とは、異なるソフトウェアやシステム間で安全かつ効率的にデータをやり取りするための接続規格を指す |
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Bias(バイアス) |
・バイアスとはAI(人工知能)の学習データに存在する偏りや、アルゴリズムの設計上の不公平性 |
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Conversion Rate(コンバージョン率) |
・顧客がペイメントプロセスを開始してから、実際に取引を完了する割合を意味し、AI(人工知能)による不正検知の誤判断(誤拒否)を減らすことでコンバージョン率(Conversion Rate)が向上する |
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Deep Learning(深層学習、ディープラーニング) |
・ディープラーニング(深層学習、Deep Learning)はML(機械学習)の一種で、多層のニューラルネットワークを使用し、特に大量の非構造化データ(画像、音声など)からの複雑な特徴抽出に優れる |
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Discriminatory Algorithm(差別的なアルゴリズム) |
・差別的なアルゴリズム(Discriminatory Algorithm)とは、AI(人工知能)システムが学習データや設計上のバイアスにより、特定の人種、性別、経済状況の顧客に対して不公平な決定を下すことを指す |
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Embedded Finance(組込型金融) |
・組込型金融(Embedded Finance)とは決済、融資、保険などの金融機能が、顧客が利用する非金融サービス(例:eコマースアプリ、配車アプリ)の中に、意識させずに組み込まれている状態を指す ・AI(人工知能)が、リアルタイム処理や超パーソナライズされたサービスを提供することで、組込型金融(Embedded Finance)機能を著しく活性化させることができる |
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EU AI Act(EU AI法) |
・EU AI法とは、欧州連合(EU)が制定したAI(人工知能)システムのリスクレベル(許容できない、ハイリスクなど)に基づいて規制する世界初の包括的な法律である |
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Explainability(説明可能性) |
・説明可能性(Explainability)とはAI(人工知能)の意思決定プロセス、すなわち「なぜAI(人工知能)がその判断を下したのか」を、人間が理解し、説明できる能力を指す |
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False Positives(偽陽性) |
・「実際には問題がない(正常な)」ものを、AI(人工知能)が誤って「問題あり(異常・不正)」と判定してしまうこと |
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False Positive Rat(誤検知率) |
・AI(人工知能)の不正検知システムが、実際には正当な取引であるにもかかわらず、誤って不正と判断してしまう割合 |
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Financial Inclusion(金融包摂) |
・金融包摂(Financial Inclusion)とは、銀行口座や従来の信用履歴を持たない人々や中小企業(SMEs)などに対し、金融サービスへのアクセスを広げること |
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Fraud Detection |
・不正検知(Fraud Detection)は取引における異常なパターンや潜在的な詐欺行為を特定するプロセスを指す |
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Generative AI (GenAI)(生成AI) |
・生成AI(GenAI)は、創造的なコンテンツ(テキスト、画像、コードなど)を生成するAI(人工知能) |
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General Data Protection Regulation (EU)(GDPR、欧州の一般データ保護規則) |
・GDPR(General Data Protection Regulation)とは、欧州の一般データ保護規則を指す |
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Hallucination(ハルシネーション) |
・ハルシネーション(Hallucination)とは、LLM(大規模言語モデル)が事実ではない、あるいは根拠のない情報を、まるで真実であるかのように自信を持って生成してしまう現象を指す ・金融サービスでは、ハルシネーション(Hallucination)は顧客への誤ったアドバイスやコンプライアンス文書の誤りなど、深刻な法的・規制上のリスクにつながる |
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Instant Payment / Real-Time Payment (RTP、即時決済) |
・即時決済(Instant Payment / Real-Time Payment)とは24時間365日、数秒以内に資金の受け渡しが完了する決済・送金システム |
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KYC(Know Your Customer)(顧客の身元確認) |
・KYC(Know Your Customer)とは、顧客の本人確認のことである |
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Large Language Model (LLM、大規模言語モデル) |
・大規模言語モデルは生成AI(GenAI)の中核のテクノロジーで、大量のデータで訓練され、自然言語を理解・生成するモデル |
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Machine Learning (ML)(機械学習) |
・機械学習(ML)はAI(人工知能)の一種で、データからパターンを自動的に学習し、予測や意思決定を行うアルゴリズム(モデル)を構築する技術 |
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Model Drift(モデルドリフト) |
・モデル・ドリフト(Model Drift)とは、AI(人工知能)モデルが学習したデータと、実際の運用環境で発生する新しいデータのパターンが時間の経過とともに乖離することを指す |
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Model Time to Deployment(モデル展開時間) |
・モデル展開時間(Model Time to Deployment)とは、新しく開発されたAI(人工知能)モデルを実際に運用システムに展開したり、既存のモデルを更新したりするのに要する平均時間を指す |
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Natural Language Processing(NLP、自然言語処理) |
・自然言語処理(Natural Language Processing)とは、AI(人工知能)が人間の言語(テキストや音声)を理解し、生成するテクノロジーを指す |
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Open Banking(オープンバンキング) |
・オープンバンキング(Open Banking)とは、顧客の同意に基づき銀行がAPI(Application Programming Interface)を通じて第三者プロバイダー(TPP)に口座データへのアクセスを許可する仕組みを指す |
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Payment Services Directive 2 (EU)(欧州の決済サービスに関する第2次指令) |
・PSD2(Payment Services Directive 2)とは、欧州の決済サービスに関する第2次指令(法令)のことである |
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Peer-to-Peer Payment(P2P個人間決済) |
・P2P(Peer-to-Peer)決済とは、個人間(友人、知人など)で行われる送金・決済のことを指す |
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Real-Time Authorization(リアルタイムオーソリ) |
・リアルタイムオーソリ(Real-Time Authorization)とは顧客がカードを提示した瞬間、数ミリ秒以内に取引を承認または拒否する処理を指す |
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Recurring Payment(リカーリング決済) |
・リカーリング決済(Recurring Payment)とは、サブスクリプションサービスなど定期的に自動で行われる支払いを指す |
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RegTech(レグテック) |
・レグテック(RegTech)とは、規制(Regulation)と技術(Technology)を組み合わせた造語である |
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ソフトポス(SoftPOS) |
・専用の決済端末(POS決済端末)を使わず、市販のスマートフォンやタブレットをそのまま決済端末として利用する技術 |
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Straight-Through Processing Rat(STP率) |
・STP率(Straight-Through Processing Rat)とは取引が人間の介入なしに、最初から最後まで自動的に処理される割合を指す |
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Stablecoin(ステーブルコイン) |
・Stablecoinとは、米・ドルや日本・円などの法定通貨や金などの資産価格に価値を連動させることで、価格の安定性を保つように設計された仮想通貨(暗号資産)を指す |
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Strong Customer Authentication(SCA、強力な顧客認証) |
・SCA(Strong Customer Authentication)は、決済時に「知識(パスワード)」「所有(スマホ)」「生体(指紋)」のうち、2つ以上の要素を用いた強力な認証を義務付けるものである ・SCA(Strong Customer Authentication)とは、PSD2(Payment Services Directive 2)の主要な要件の一つである |
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Transaction Scoring(トランザクションスコアリング) |
・トランザクションスコアリング(Transaction Scoring)とは、個々の決済取引に対して、AI(人工知能)がその正当性やリスク(不正の可能性)を数値化(スコアリング)すること |
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Tokenization(トークン化) |
・トークン化(Tokenization)とは、実際のカード番号などの機密情報をランダムな文字列(トークン)に置き換えて保存・送信するセキュリティテクノロジーを指す |
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XAI(Explainable AI)(説明可能なAI) |
・AI(人工知能)の振る舞いをあらゆる観点から理解し、信頼できるようにすることを目的とするテクノロジーの総称で、日本語では「説明可能なAI(人工知能)」と訳されているが、出力結果に至った経緯や判断の根拠を説明できるAI(人工知能)を指す |
各種資料より作成
“AI(人工知能)とペイメントについて”の第1回目は、欧米のペイメント(決済、送金)におけるAI(人工知能)の活用状況について、その概要を紹介してみたい。
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